【前編】年に一度、颯が神馬になる日~鴨川 吉保八幡神社の流鏑馬~

千葉県鴨川市にある吉保八幡神社(きっぽはちまん)では、毎年9月の最終日曜日に流鏑馬(やぶさめ)神事が行われるのですが、今年も行ってまいりました!

何をするのかというと、、、

そうです、この流鏑馬神事の神馬(しんめ)は、当クラブに所属する馬なのです。颯(はやて)は、神馬を務めて今年で三年目。今年も立派におつとめしてまいりました。

目次

「絵馬」は神馬からきている

そもそも、神馬って何なのか、ご存知の方は少ないかもしれません。

神馬は、神様が乗る馬として神聖化されたものだそうです。

奈良時代から、祈願のために神社に奉納されたのが始まりだそう。しかしながら、馬の維持はコストがかかるし、世話も大変。小さな神社は負担になります。さらに、馬は高価なものだったため、気軽に奉納できるものではありませんでした。そのため、馬を奉納するかわりに「絵馬」が登場し、そちらへ移行していきました。「絵馬」ってもともと、馬を奉納するところから始まったのです。「絵馬」に祈願するのは、馬を奉納しているのと同じことなんですね。さぁ、馬好きな皆さま、神社にいったら「絵馬」を奉納しましょう。

もう少し、神馬のうんちくを語ると、平安時代に書かれた『延喜式』では、黒い馬は雨を祈願するとき、白い馬は晴れを祈願するときに奉納したそうです。ここ数年、雨が多いのは、颯(はやて)効果なのでしょうか。。。(汗)

吉保八幡神社のやぶさめでは、昔は農耕馬を使っていたそうです。ですが、時代も移り変わり、農耕馬が減りました。そこで、ご縁があり、神事の神馬として当クラブの馬がおつとめさせていただくことになりました。

そんなこんなで、四街道グリーンヒル乗馬クラブは、20年以上にわたりこの吉保八幡神社の流鏑馬をサポートさせていただいております。

馬にとって簡単じゃない祭事・神事

度々、ニュースで祭事や神事で馬が逃げた等のニュースが流れることがあります。

それは、沢山の人に囲まれたり、覗き込まれたり、沢山の音、歓声、カメラのシャッター音、花火の音、楽器の音、、、そのほかにも、いつもの馬の生活の中で出会ったことがないような動きや出来事に出合うと、馬が怯えたり、驚いたりして走りだしてしまうことがあるのです。

お祭りですから、たくさんの人が集まります。吉保八幡神社のやぶさめ神事では、毎年3万人が訪れるくらいの規模です。流鏑馬馬場の周りにはたくさんの人が集まり、さらに長狭街道沿いにあり、車の往来も多いところです。時速80kmで体重500kgを超える馬が突っ込んでいったら大変な事故になりかねません。

馬は臆病な生き物です。見た事のないものや、音、動きには過敏に反応します。そのため、その馬に合った調教・調整を行うことで、人にも馬にも安心・安全な環境を確保していきます。

とはいえ、生き物ですから、リスクはゼロになりません。

実際に、今回は雨天でしたから、傘を持った方がたくさんいました。傘を閉じて、馬場に突き刺すように持っていた方もいました。颯(はやて)はそれをみて、蹄跡から少しそれました。ほとんどの方は気が付かなかったかもしれませんが、馬によってはビックリして止まって立ち上がったり走り始める馬もいるかもしれません。

前に身を乗り出したり、驚かすような大きな音をたてたり、、、そういうことも馬にとっては脅威です。

人混みの中の馬の心境

皆さん、想像してみてください。

サファリパークで、道の脇にライオンがたくさんいてこちらをみています。そこをあなたは走って通過します。

一頭のライオンが身を乗り出して道に入った姿が見えました。

あなたはどうするでしょうか?

全速力で逃げませんか?

馬が流鏑馬馬場で走る時のドキドキ具合ってこんな感じです。

ニュース等で事件になる「馬が逃げた」のは、驚いたり、怖かったからです。それを調整していくのは、なかなかどうして簡単ではありません。先日、祭事で馬を調教の一環として殴ったり蹴ったりするといったことが報道されていたそうですが、大変悲しい事実です。そんなことをすると、さらに馬は怯えて暴れるリスクが高まります。

当クラブでは、馬に力で言うことをきかせるのではなく、馬に安全を確認させて、安心させ、納得して仕事をしてもらうようにします。

ちなみに、馬が動揺するそぶりを見せたら、「ホーー」と声をかけると同時に、人間は息を吐いて自分の身体の緊張をゆるめて、リラックスしながら落ち着かせます。馬は呼吸で会話するそうです。空気が緊張したり、筋肉の硬直を感じることで危険を察知する能力があるので、人間がまずリラックスしましょう。

神事直前の最後の調整

長い前うんちくでした。さて、神馬の颯(はやて)に戻りましょう。颯(はやて)は、木曜日から鴨川に出張。広くて快適な馬房にお泊り♪

当日は、台風24号の影響で生憎の天気でしたが、午前中はおだやかで雨も降らず。朝の9時半頃から孝徳先生が颯(はやて)の調整に入りました。

当日朝の颯(はやて)くん。いつもはやんちゃな彼が、借りてきた猫みたいにおとなしい(笑)他所さまのお家だってわかってるのね(笑)脇に垂れ下がったロープもいたずらもせずエライぞ!

流鏑馬馬場で経路確認と運動

厩舎から車道を歩いて15分程の吉保八幡神社に移動し、流鏑馬馬場で運動開始。

馬はとても記憶力がよく、一度覚えた行動を再現する習性があるのでその能力を利用していきます。

本番のように、スタートラインで三回回ってから走り始めます。

駆歩でゴールまでいくと、並歩をしながら短鞭を振り回して、弓矢の動きに対応できるようにしていきます。なぜそんなことをするかというと、馬は視界が350度程あると言われているので、真後ろ以外は見えます。普段、乗馬クラブで弓矢を使う人なんていないので、何か見慣れないものを取り扱っているのを馬が見ることで、驚く可能性があるのです。なので、馬に「人が鞍上でこんなことをしていても危険はないよ」ということを伝えておきます。

そして走り込みを行い、万が一に備えて体力の調整をしました。

最後に、神社の境内に行き、神事前後に歩く経路を颯(はやて)に記憶させます。

そして、神さまに朝のごあいさつ<(_ _)>

今日一日、無事におつとめできますように。。。

長狭の田園と神馬

最終調教も一段落し、厩舎に一度帰宅。

重い雨雲が、房総の山々と美しいコントラストを作り出し、とても幻想的で墨絵のようでした。

美しい長狭の棚田と馬。

うーーーーーーん、絵になる!!

さて、ごはんを食べたらいよいよ神事がはじまります。 

後編へつづく

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